なんとも心暖まるクラリネットとピアノのデュオ・アルバムである。
同時にこれはウィックマンにとって、はからずも彼のラスト・レコーディングになってしまった。本年（2006年）の2月13日、ガンのために帰らぬ人となっている。そんなことを考えながらアルバムの演奏に耳を傾けると、ここには彼の人生のすべてが込められているような気がしてならない。言い換えるならばこれは、プッテ・ウィックマンがのこした"白鳥の歌"なのである。
死を目の前にしたときに、白鳥はもっとも美しく歌うのだという言い伝えがある。ここでのウィックマンの演奏が、まさにそういうものなのではないだろうか。人生の甘さもほろ苦さも知りつくし、それらを呑み込んだ上で淡々と音楽に接してゆくプッテ・ウィックマン。
さりげない中にも凛とした表情をもつ彼のプレイには、本当の意味での真のミュージシャンシップをみる思いがする。
岡崎 正通
