曲がよくて、ソロがよくて、ほどほどいい塩梅の長さで終わる。これぞいいピアノ演奏、いやジャズ演奏のすべての要諦、眼目ではないか。その音楽鑑賞の大切なところを十全に満たしているのがマティアス・アルゴットソン・トリオなのだ。
トリオの雰囲気は順風である。妙な力が入ったり、新種を考案しようとする悪だくみが働いたりしていないのがいい。出しゃばるでもなく、悪びれるでもない。
要するに長く聴けるピアノ・トリオである。一時的に大きく開花してパッと散ってしまうのではなく、つぼみの形を残しつつロング・セラーになってゆくピアノ・トリオである。さて、私は「ヤング・アンド・フーリッシュ」をことのほか気に入った。個人的ベストとしてこれを挙げたい。陳腐ないい方で恥ずかしいが心のヒダに浸み込んでくるのである。
寺島 靖国