莫大な宣伝費をかけて売り出されても、いつの間にか忘れ去れる新人もいれば、ショップの店先に並べられたディスクだけで、強烈な印象をファンの心に焼きつけ、ずっと来日が待ち望まれてきた無名のベテランもいる。
バド・パウエルやバリー・ハリスといった本物のビ・バップの香りが立ちのぼるピアノを弾くホッド・オブライエンは、間違いなく後者の代表格である。
ジャズの輸入盤市場に精通した方なら、このピアニストが「Unsung Hero」(実力がありながらしかるべき評価を受けていない英雄、オブライエンの言葉を借りれば「無名ジャズ戦士」)であることに、異論の余地はないはずだ。
後藤 誠